シェアハウスソーシャル・キャピタル調査レポート

調査レポート
入居者の意識

調査レポート第4回のテーマは、“交流の意識と実態”についてです。シェアハウス入居者に実施したインタビュー調査とアンケート調査の結果から、シェアハウス入居者が抱く交流の意識と実態を明らかにします。

他の入居者との関係

下記は、シェアハウス入居者へのインタビュー調査から、他の入居者との関係に関するコメントを取りまとめたものです。

他の入居者との関係
Aさん親戚の○○さん
Bさん疑似家族(友達要素はあるが生活の深い部分が密着)
Cさん仲のいい人は家族
Dさん日々成長していく仲間
Eさん友達と家族の中間点
Fさん家族でもある友達でもあるミックスした感じ
Gさんおうちの人
Hさん見えない信頼感がある人
Iさん家族みたいな人

9名中6名が家族、友達、親戚といった言葉で他の入居者との関係を表現していますが、その全員が一言で表現する事を躊躇しています。シェアハウスにおける他の入居者との関係は、今までの日本に無かった新たな関係という事なのかもしれません。Gさんはそのような感覚を、“おうちの人”という言葉で表現しています。

他の入居者と暮らすことのメリット・デメリット

下記は、シェアハウス入居者へのインタビュー時に、他の入居者と暮らすことのメリット、デメリットに関する設問の回答をまとめたものです。

 メリットデメリット
Aさん人間関係、交流が増える狭いコミュニティでの噂
Bさん任意で一緒に行動できるおいしい食事などを独り占めできない
Cさん一人で食事をしなくても済む
気軽に行動を共にできる
設備を共有する面での不便
Dさん気軽なコミュニケーション
大人数ならではの空間
人のことを気にする
Eさん何かと頼りになる
毎日が楽しい
食べ物などが紛失する
Fさん 話し相手がいる
生活感があり落ち着く
互いに感化し合える
他人のペースにも合わせられない人には難しい
Gさん寂しくない
互いに感化し合える
知人に生活を心配されたり驚かれる
整理整頓がしっかりする
Hさん女性の場合、安全
楽しい、節約、情報交換
人がいる事による節度ある生活
プライバシーに制限がある
Iさんパーティがある
食事のお裾分けがある
特になし

全体としては、メリットでは他の入居者との交流や信頼感から生まれる精神的な事柄が挙げられるのに対し、デメリットでは設備を共有する上での物理的な不便や不都合が挙げられ易い傾向があるようです。

シェアハウスで他の入居者と暮らす上での工夫、気遣い

下記は、シェアハウス入居者へのインタビュー時に、他の入居者と暮らす上で工夫している事、気を遣う事に関する設問の回答をまとめたものです。

他の入居者と暮らす上で工夫している事・気を遣う事
Aさん最低限のルールを守る
Bさんあまり気を遣っていないが、物理的な事(シャワー等)に気を付ける
Cさん最低限、他人に迷惑にならないようにする
Dさんあいさつをする 非公式なルールを知るように努める
Eさんあいさつをする
Fさんキッチンや物干しといった共用設備の利用時に気を付ける
Gさん整理整頓をする ゴミ出し当番を守る
Hさん細かい事を気にしすぎない事
Iさん特になし

あいさつ程度、最低限のルールを守るだけ、細かい事は気にしないといった回答も多いですが、シャワーやキッチンの利用方法、整理整頓、ゴミ出し当番に関する事など、共用設備利用時の気遣いも目立ちます。インタビュー時には、特に何も心掛けていない人は、このような生活の規範が無意識に身に付いているケースが多いのではないかと感じました。このような規範意識は、ソーシャル・キャピタルの構成要素である“互酬性の規範”に近いものであると言えます。

入居する前後の交流に対するイメージ

下記は、シェアハウス入居者へのインタビュー時に、シェアハウスに入居する前に抱いていた交流のイメージと、実際に入居後に行っている交流に関する設問の回答をまとめたものです。

 入居前の交流イメージ実際の交流
Aさん楽しそう、賑やか
プライバシーは大切にしたい
自分のマイペースな感じで生活できる
1人暮らしの感覚
Bさん交流に時間を取られ過ぎ自分のペースを乱す事を懸念仲良くなる事で自分のペースはやや乱されたが、逆に助けになるし精神的にも落ち着く
Cさんあまり賑やかではない印象食事や外出を共にするなど交流は盛んで、心地良い
Dさん欧米のシェアのような、それぞれが独立した生活をしているイメージ入居者のコミュニティにルールや暗黙の了解がある
Eさん特にイメージは持っていなかったパーティなど、コミュニティ・ルームに集まる機会が多い
Fさん海外ドラマのような交流が盛んなイメージと共に、交流が少ないという情報をあわせ持っていた交流が濃い時もあれば、全く交流しない時もある。時と場合による印象
Gさん特にイメージは持っていなかった一緒に食事をしたり、会話をしたりする
Hさんワイワイしている、一緒に外出楽しくお喋りをしたり、賑やかでいい印象
Iさん家族のような交流他の入居者が優しくしてくれる

入居前には、交流が盛んなイメージを抱いていた人が9名中4名、そこまで盛んではないと思っていた人、どっちなんだろうと思っていた人が1名、特にイメージを抱いていなかったという人が2名います。実際には、入居後には外出や食事、会話を共にしたり、パーティが開催されるなど盛んな交流があると感じている事が分かります。ただし、自分の時間やプライバシーが確保されマイペースで生活できると感じている人に対し、交流によって自分のペースが乱されていると感じる人もおり、この点では個人差があるようです。

交流意欲

下記のグラフは、シェアハウスにおける交流意欲に関するアンケート調査の結果を取りまとめたものです。

交流意欲(横軸:割合%、縦軸:意欲) 【拡大

調査の結果、8割以上の人が積極的な交流を望んでいる事が分かります。ただし、その多くの人が節度ある交流を望んでいる事も分かります。一方で2割弱の入居者は必要最低限の交流で良いと回答しており、一部で個人的な生活を重視する志向も存在する事が分かります。

交流行動実施率

下記のグラフは、シェアハウスにおける交流行動に関するアンケート調査の結果を取りまとめたものです。

交流行動実施率(横軸:割合%、縦軸:行動) 【拡大

調査の結果、ほとんどの入居者が挨拶を行っており、約8割の入居者が世間話をしている事が分かります。また、約半分の入居者が一緒にテレビやDVDを見たり食事を共にしている他、4割以上の入居者が仕事や恋愛の相談をしたり一緒に外出するなど、プライベートを含んだ交流も盛んに行われていることが分かります。ただし、約2割の入居者は世間話はせず挨拶だけの交流となっており、交流の度合いには一定の個人差もあるようです。

なお、性別では男性よりも女性が、年齢構成では20代後半の入居者が特に活発に交流していることが分かりました。下記のグラフは、性別ごとのシェアハウスの中での交流状況を比較したものです。

このように、男性よりも女性の方が活発な交流を行っている事が分かります。特に世間話、仕事や恋愛の相談といった交流は、女性の方が多いようです。また、下記のグラフは、年齢構成別の交流実施状況を比較したものです。

あいさつ以外の交流全般において、20代後半の年齢の入居者が最も活発である事が分かります。

シェアハウスでの交流のまとめ
  • シェアハウスの他の入居者との関係は、従来には無いものである。
  • シェアハウスの他の入居者と暮らすメリットでは精神的な事柄が、デメリットでは物理的な事柄が挙げられる傾向がある。
  • シェアハウスの入居者の約8割は積極的な交流を、約2割は必要最低限の交流を望んでいる。ただし、多くの入居者は節度ある交流を望んでいる。
  • シェアハウスではあいさつ、世間話などの軽い交流だけでなく、プライベートを含んだ交流も盛んに行われている。
  • 性別では女性が、年齢構成別では20代後半の入居者がより活発な交流を行っている。

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